サマーソニック2025が8月16、17日、千葉市と大阪府吹田市で開かれた。金曜深夜のソニックマニアを含め2カ所で21万6千人を動員。ライブの主戦場をフェスから単独公演に切り替える大物アーティストが相次いでいるため、世界中のフェスがその影響を受けているが、サマーソニックは別の方向性でラインアップを充実させ、多様なライブの提供につながった。
今回のサマーソニックは不運な要素が重なった。大物アーティストの出演交渉に苦戦していることが公式サイトで報告され、Z世代に人気の米女性シンガー・ソングライター、ビリー・アイリッシュはサマーソニックと同じ日に単独公演を開催した。主催者は以前から積極的に起用していた邦楽を充実させ、短い時間ながらMrs. GREEN APPLEやHANAが出演。さらに中南米がルーツのラテン系にも力を入れ、世界のポップスの大きな潮流に追いついてみせた。(日本では)無名の中南米系アーティストに多数のラテン系外国人客が集まり、日本語や英語の会話が聞こえない中でスペイン語で曲を大合唱する状況に遭遇したことは貴重な体験だった。
出演者が若手アーティスト中心になったり、日本を含むアジア系アーティストが増えたりしていることは、他の産業と同様に経済の影響を受けている。欧米の大物アーティストを招きにくくなっていることをどう克服するかは主催者の腕の見せどころだ。出演ラインアップに表れた努力は賞賛されるべきだろう。
ラテン系アーティストは2組の印象が強い。一つはキューバ生まれのカミラ・カベロだ。前年のクリスティーナ・アギレラと同様に高い歌唱力があり、声に伸びがある。派手さはないがさまざまに形が変わっていくステージセットも面白い。映し出されるモニターにCGをほとんど使わず、歌うカミラに集中させる演出も好感が持てた。
もう一つはカリブ音楽とエレクトロサウンドを融合したコロンビアのバンド、ボンバ・エステレオだった。エレクトロ機器の使い方はまだこなれていないが、トロピカルハウスを思わせる音像に近づけば大きなステージに出演するチャンスが増える。集まった観客はほとんどがヒスパニック系のように見え、MCも曲の合唱もおそらくスペイン語。サマソニでしか体験できないような時間だった。
2年前にKポップのニュージーンズが東京会場のメインステージに登場して以降、午前11時からのオープニングアーティストに誰が出るかがこの1、2年の注目となった。今年はSixTONESとMrs. GREEN APPLEだった。ミセスは2年前から音楽チャートのトップ10に曲が入り続けており、ライブではヒット曲の連発だ。タイパ時代らしくイントロから盛り上がる曲が多いため観客もずっと盛り上がり、MCでようやく落ち着く。少しビブラートがかかった大森元貴のボーカルが安定しており、しばらく人気は衰えないだろう。
メインステージのトリはフォール・アウト・ボーイとアリシア・キーズ。個人的にも2000、10年代とよく聴いたアーティストであり、もはや懐かしい。フォール・アウト・ボーイは日本向けに「ザ・キンツギ・キッド」もやってくれた。アリシア・キーズは自己を過剰に露出する21世紀の若手女性歌手像から離れ、伝統的なR&Bのスタイルを保ちながら女性の自立などを歌って高い評価を得てきた。ピアノを立ち姿勢で弾き、ライブの後半には初期のヒット曲を歌ってファンを喜ばせた。
勢いを感じさせたのはデビュー間もないHANA。持ち時間は20分でステージも大きくはなかったが、入りきらないほどの客が集まり、東京会場ではモニター映像があることを前提にした演出も光った。Fruits Zipperが突き抜けたKawaiiポップを追求した一方、Kawaii路線から離れようとしているようにも見えるグループもあった。カワイイ文化がまだ力を持ち得ると同時に、試行錯誤も続いていることを感じさせた。
暑さ対策は今年も続いた。野外ではひさし付き休憩所が増設され、東京会場の物販は空調が効いた室内に移された。公演以外に外で長時間いることはなくなったと言ってよい。