フジロックフェスティバル2025

7月25~27日、フジロックフェスティバルに参加した。主催者によると、24日の前夜祭を含め延べ12万2千人を動員。昨年の9万6千人、23年の11万4千人を上回り、コロナ禍以降最多だった。

フジロックに20年以上参加しているが、毎年少しずつ変化がある。今年は入場ゲートから徒歩1時間近くかかるオレンジカフェ(旧オレンジコート)にアジア、日本のアーティストが出演するステージができた。アジア出身のアーティストは以前から、人気や実力があれば欧米のアーティストと同じように主要ステージに出演してきた。今年も韓国、台湾、インドネシアのグループが出ている。それでもわざわざアジアのアーティスト向けに新たなステージを設けた。そこに配置された出演者を見ると、アジアのミュージシャン、ファン、音楽に丸ごと発展してもらおうという思いを感じさせる。

2010年代から増え続けるアジア人観客の中には、母国で音楽活動をしている若者もいる。日本人ミュージシャンが、アマチュア時代にフジロック出演を目標とし、それを達成したアーティストがステージ上で感慨深く話す姿を何度も見てきたが、アジアの若者が同じような目標を持っても、壁は厚い。新たなステージは、アジア版ルーキー・ア・ゴーゴーになる可能性がある。彼ら、彼女らにアジアを代表するフェスへの具体的な近道を提供するとともに、出演者の交流や、他の公演を見ることによる自身の音楽の発展にも貢献する。その恩恵はやがてフジロックにも日本の観客にも還元されるだろう。

メインステージのトリはフレッド・アゲイン、ヴルフペック、ヴァンパイア・ウィークエンド。フジロックは一般的知名度が高くなくても質の高いライブが期待できるアーティストをトリに抜てきしてきた。英DJのフレッド・アゲインと米ファンクバンドのヴルフペックは初来日ながらベストアクトと評価されるほどのライブだった。フェスでないと見られないアーティストや注目の新人が多かったこともフジロックの独自性を示していた。

ヴルフペックは、集団で実演芸術を創造し、観客と空間を共有することの楽しさを見せてくれた。便宜的にファンクとされているが、ジャンルを超越したバンドサウンドだった。

野外であまりライブをしない山下達郎が、フジロックに出たことは広く話題になった。デビュー50年というタイミングでの出演で、「RIDE ON TIME」「さよなら夏の日」などを披露。「アトムの子」では鉄腕アトムのテーマ曲を歌い、「プラスティック・ラブ」では竹内まりやが登場して大歓声となった。山下の衰えない声にも驚いた。

英ジャズバンドのエズラ・コレクティブは「ロンドンの多くの若手ジャズバンドがフジロック出演を目指している」と話し、観客を喜ばせた。ナイジェリアがルーツの英女性ラッパー、リトル・シムズ、ニジェールのギタリストのエムドゥ・モクター、英DJのバリー・キャント・スウィムは今後の音楽界を引っ張っていきそうだ。

フジロックの開催は参政党が議席を増やした参院選の1週間後だった。日本のバンドDYGL(デイグロー)は前夜祭と3日目に登場し、MCで「あらゆる差別に反対します」と訴えた。東京・八丈島出身のバンドMONONOAWAREは地元の伝統芸能、八丈太鼓の継承者3人と協演したが、1人は外国人だった。外国人が日本の伝統を維持しているという人選に、排外主義の矛盾が込められていた。一方で、出演者の一部は、参院選前から外国人排斥支持を公言していた。「音楽に政治を持ち込むな」という主張もある中、客も出演者も社会派が多いフジロックは、音楽と政治が接続されやすい場であることを、またも感じさせた。

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