フジロックフェスティバル2023

フジロックフェスティバルが7月28~30日、新潟県湯沢町の苗場スキーリゾートで開かれた。コロナ禍を経て4年ぶりに行動制限のない開催となり、コロナ前に迫る11万4千人が来場した。2020年の中止を挟み26回目。21、22年は感染症対策の制限付きで開催されたが、今回は制限なし。マスク姿の参加者はほぼなく、アジア圏を中心とする外国人客も多かった。

200組以上の出演者の中で、注目を集めたのはLIZZO(リゾ)とフー・ファイターズだ。体格がかなり大きいアフリカ系女性、リゾは、その体型を主体的に生きる「ボディ・ポジティブ」の思想を象徴する歌手だ。ダンサーの体型も多様だ。男性歌手が「Fuck」と叫ぶのは見慣れた光景だが、リゾはステージ前の女性ファンを、親しみを込めて繰り返し「Bitch」と呼ぶ。過剰な振る舞いは演出にメッセージ性を呼び起こし、男性と女性、白人とアフリカ系、細身と豊満の壁を超えていく。容姿にコンプレックスを抱きがちな若い女性を精神的に解放していくようだった。

フー・ファイターズは、ボーカル・ギターのデイブ・グロールのMCを含め、これまで常に安定したライブを披露してきた。今回は人気があったドラマー、テイラー・ホーキンスの死去後初めての日本公演だったが、エネルギーあふれる演奏は変わらなかった。メンバー紹介ではメタリカ、ブラック・サバス、ラモーンズの一節を演奏。アラニス・モリセットがゲストで登場し、3日前に亡くなったシンニード・オコナーの曲をカバーした。その後人気曲を次々に演奏し、メンバーを失った悲しみを感じさせなかったが、最後に「テイラー・ホーキンスが好きだった曲」を披露して故人をしのんだ。

話題性の面では、1日目に矢沢永吉が登場。スター性を徹底して追求した演出で多くの一見さんを楽しませた。大阪のオルタナティブロックバンドGEZANは、コロナ禍で挑発的に行っていた多人数での密集ライブを、コロナ後もメッセージ性のある演出に発展させていた。解散を表明している川崎市のヒップホップ集団BADHOP(バッド・ホップ)は、誠実なMCが観客に好印象を与えた。地縁と家族を重視する姿勢は海外のヒップホップグループとの相似性を感じさせた。

ザ・ストロークス、ヨ・ラ・テンゴ、ウィーザー、スロウダイヴらキャリアのあるバンドはいずれも安定のパフォーマンス。ルイス・コール、キャロライン・ポラチェク、100ゲックス、ブラック・ミディ、グリフィン、羊文学、長谷川白紙ら若手は今後の大成を期待させた。

フジロックは今回から、ステージ間のバス移動や行列の回避ができる2種類の専用パスを新設した。通し券(5万5千円/3日)とは別に、ステージ間バス移動と飲食店の行列回避など(2万円/日)、ステージ前専用エリア入場とグッズの優先購入(1万5千円/日)のパスが用意された。快適さにはコストが伴うことを実感させた。

コロナ禍をきっかけに飲食物販店での電子マネー決済も進んだが、通信状況や機器の不調で現金決済併用にならざるを得ず、課題が残った。フジロックのために来日し、日本の現金をあまり持たない外国人ツアー客は苦労しただろう。

国籍の多様化は運営の新たな対応を迫られている。会場内の案内が日本語と英語だけでは不十分になり、主催者は今年から通訳ボランティアを募集した。9カ国語、約50人が登録したが十分とは言えない。

今年の音楽フェスは、コロナ禍で奪われた機会を取り戻すかのようにどこも盛況だ。ただ、チケット代は年々上がり、値上げラッシュで交通費や飲食費も上がっている。フェスが民間企業の事業である以上、収支が重視されるのは致し方ない。ただ、経費をチケット代に反映させていくと若いファンの参加は簡単ではなくなる。「フェスに参加できる人は資金と休暇が確保できる「限られた層」」と批判するアーティストもいる。国籍、世代など、多様な参加者が同じ場所で快適に楽しめること、持続可能なフェスを考えることは、未来の社会を考えることにつながっている。

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