サマーソニック2024

サマーソニック2024が8月17、18日、千葉市と大阪府吹田市で同時開催された。延べ25万8千人が参加した。2000年の初開催から今年で25年。東京会場はこれまで通り千葉市の幕張新都心だが、大阪は会場を変更。25年の大阪・関西万博準備の影響を受け、舞洲スポーツアイランドから万博記念公園に移転した。会場が広くなり、ステージも4から5に増えた。東京会場のメインステージはアリーナ中央に長い張り出しが設けられ、ファンとアーティストの距離が近くなった。

メインステージのトリはイタリアのロックバンド、マネスキンと、英ロックバンド、ブリング・ミー・ザ・ホライズン。マネスキンは2022年に続く出演。前回はメンバー4人がユーロビジョン・ソング・コンテスト優勝の勢いで自由に振る舞っていたが、今回はドラムとベースが音の土台をつくり、ギターとボーカルがライブの生々しさを伝えるという安定感を見せた。

ブリング・ミー・ザ・ホライズンは今年の出演者の中では最もハードなロックに位置付けられるバンド。ステージはプロジェクションマッピングで風景を変えていく。ライブはストーリー仕立てになっており、バンドと観客はゲーム機のプレーヤーとなって、意思を持った人工知能(AI)と戦う。架空とはいえ現実味のあるSF的展開だ。バンドはもともと、精神的に打ちのめされた若者の声を代弁する歌詞を歌っていた。バンドとファンがゲームで共闘する演出は、困難を克服する仲間という一体感を生んだ。

日本のヒップホップの顔役を自称するMCのR-指定とDJ松永のCreepy Nutsは、「Bling-Bang-Bang-Born」を出してジャンルを超えた知名度を獲得した。ヒット曲は多いのでライブは盛り上がる。R-指定は曲間のしゃべりもうまい。しかも真面目だ。ライブのノリ方について「みんなに合わせなくてもいい。後ろで腕を組んでいてもいい。自分のリズムで見て」と少数派への配慮を見せ、好印象を残した。

クリスティーナ・アギレラは2000年代に第一線で活躍した米女性ポップス歌手。ジェニファー・ロペスらとともにラテン系歌手の台頭に貢献した。踊りながらでも声が揺らぐことがなく、全く衰えない歌唱力に感嘆する。

大物アーティストとアイドル的人気のグループが多いメインステージ、セカンドステージとは異なり、3番目のステージには興味をそそるアーティストが充実していた。アイスランドのZ世代女性シンガー・ソングライター、レイヴェイは既に世界的人気があり、普段通りの演奏を気負いなくやったというライブだった。米音楽家イヴ・トゥモアはジャンル横断的な音響で、現代的ではあるけれども評価を拒むようでもあり、それがかえって注目の的となるのもうなずける。

多数のアーティストが出るフェスでは、出演者の体調不良や身内の事情、不祥事などによるキャンセルが起こる。今回はジョン・バティステ、ピンクパンサレスがキャンセル。出演者の多様性の面で痛手だった。

東京会場は仮設トイレが減った。女性だけに長いトイレ行列ができていたが、近年は女性のみに不便を強いる状況に厳しい目が向けられる。

コロナ禍前からの傾向ではあったが、アジア系の若い世代が増えてきた。会場内で聞こえてくる中国語、韓国語の会話の多さ、Kポップアーティストに集まった多数の客からも、アジア新興国の勢いを感じる。ライブの盛り上がりもアジアの若者のおかげで増幅されているだろうから感謝すべきだろう。

サマーソニックは初の試みとして海外進出し、タイ・バンコクで開催した。現地の客にとってはいくつかの日本のアーティストを一度に見ることができ、日本のアーティストはアジアで知名度を上げることができ、主催者にとってはアジア市場の接点を開拓できる。大型フェスも欧米と日本のアーティストに頼る時代が終わりつつある。

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