アメリカのルーツ音楽はニューミュージックマガジンの中村とうようが本格的に研究し、雑誌などで随時発表している。90年代後半に、企画盤が断続的に発売された。
1975年。邦題「ブラック・ミュージックの伝統 ジャズ、ジャイヴ&ジャンプ篇」。1920年代から60年代のジャズ、ブルースなど、ソウルやロックに至るまでのアフリカ系ポピュラー音楽を概観する企画盤。ニュー・ミュージック・マガジンの中村とうようが選曲。26曲収録。キング・オリヴァー、ルイ・アームストロング、デューク・エリントンの「ザ・ムーチ」、キャブ・キャロウェイの「セントルイス・ブルース」、ミルス・ブラザーズの「タイガー・ラグ」、インク・スポッツ、カウント・ベイシー、アースキン・ホーキンズ、ルイ・ジョーダンの「カルドニア」などを収録。このほか、ウォッシュボードバンド、ジャズにエレキギターを導入したエディー・ダーラムなど。CD化は1996年。
1975年。邦題「ブラック・ミュージックの伝統 ブルース、ブギ&ビート篇」。25曲収録。「カンサス・シティ・ブルース」「パイントップス・ブギ」「ダーティ・ダズン」、スリーピー・ジョン・エステス、「オールド・ブラック・キャット・ブルース」「モーニング・ザ・ブルース」「ロケット88」、ライトニン・ホプキンス、マディ・ウォーターズ、ジョン・リー・フッカー、エルモア・ジェイムス、バディ・ガイ、T・ボーン・ウォーカーなどを収録。前半はブルースの重要な曲、後半は有名アーティストを中心に選曲。後半に近づくと音もロック、ロックンロールに近くなる。
2000年。邦題「40年代ジャンプ音楽の本質 ブラック・ビートの火薬庫-レット・イット・ロール」。25曲収録。スイングジャズから初期リズム&ブルース、ロックンロールに至る途中の、快活なジャズ系バンドをジャンプとして収録。サヴォイ・サルタンズが2曲、スキーツ・トルバート楽団が2曲、ピート・ブラウン・バンドが3曲、ラッキー・ミリンダー楽団は4曲、ライオネル・ハンプトン楽団が2曲、アースキン・ホーキンズ楽団が2曲あり、個人ではルイ・ジョーダンが2曲収録されている。ウォルター・ブラウン・ウィズ・ジェイ・マクシャン・トリオの「コンフェッシン・ザ・ブルース」、シズター・ロゼッタ・サープの「シャウト、シスター、シャウト」収録。
1997年。邦題「伝説のブギ・ウギ・ピアノ」。26曲収録。中村とうようによると、ブギ・ウギとはピアノで弾くブルースで、左手で1小節に8ビートを刻む。1920年代のシカゴで盛んになった。「カウ・カウ・ブルース」「パイントップス・ブギ」からストンプ、ファイヴズ、ロックスを経由してジャズに取り込まれる過程を年代順に聞ける。
2000年。邦題「バーバーショップからヒップ・ホップまで アメリカン・コーラスの歴史」。1920年代からのコーラスの歴史を概観する。28曲収録。30年代と50年代の曲が多く、70、80、90年代は1曲ずつ。ミルス・ブラザーズ、ボズウェル・シスターズ、アンドリュース・シスターズ、インク・スポッツ、ウィーヴァーズ、エイムス・ブラザーズ、マクガイア・シスターズ、ムーングロウズ、フラミンゴズと有名どころが入る。ヴォカリーズからランバート・ヘンドリクス・アンド・モス、ガールグループからシレルズ、リズム&ブルースからインプレッションズが選ばれ、最後はケイ・シー&ジョジョで終わる。タイトルを「アメリカン・コーラスの歴史」とするならば、60年代以降を別にして2枚組にしてもよかった。山下達郎が寄稿している。
1997年。1920年代から50年代のゴスペルの発展過程を解説。24曲収録。最初の数曲は教会の牧師が説教あるいは歌う。無伴奏で歌うグループ(ジュビリー)、伴奏付きで歌うグループ(カルテット)、マヘリア・ジャクソン、ディクシー・ハミングバーズ、シスター・ロゼッタ・サープ、ファイヴ・ブラインド・ボーイズ・オブ・ミシシッピ、アレサ・フランクリンなどを収録。
1999年。24曲収録。アイルランドからバイオリン(フィドル)を持ってアメリカに渡った移民が、アメリカのカントリー、ブルーグラスに与えた影響を探る。前半はアメリカに渡ったアイルランド人の演奏、後半はカントリーにフィドルを取り入れたアメリカ人の演奏を収録。前半は全曲がアイルランドのダンス音楽であるリールをメドレー形式で演奏し、後半はマンドリン、バンジョーが入るブルーグラスやフィドルが入ったジャズとなる。後半は、都市と地方、社会階層、文化的背景が音楽を変化させたり、させなかったりする実例を収録。この企画盤はアイルランド音楽とアメリカ音楽の関係に焦点を当てており、研究が進んでいなかった中東欧由来のロマ、クレズマー、イディッシュ音楽との関係には触れられていない。
1996年。邦題「ロックへの道」。1950年代半ばのロックンロールに至るさまざまなポピュラー音楽を、時系列的に選曲。これを入り口として、中村とうようが選曲、監修したシリーズの「各論」を聞けば、なんとなく概要がつかめる。一連のシリーズの中で、「ロックへの道」は、他の企画盤とやや選曲方針が異なっている。ロックンロールが成立する以前の主なジャンルで、曲名にロック、ロールが含まれる事例を集めていたり、エレキギターの使用例を挙げていたりする。リズムの強調、演奏形態の変化、表現の拡張といった音楽面での進化の過程も一連のシリーズで押さえておきたい。
2000年。1924年から1948年までのアメリカの民謡、カントリー、ブルーグラスなどを収録した4枚組。104曲収録。演奏者はほとんどが白人なので、ブルースやジャズ、ブギウギなど、アフリカ系由来の音楽はあまりないので、他のオムニバス盤も聞くべきだろう。解説はないので選曲の意義を自分で調べるしかない。
2000年。ジミー・ロジャース、アンクル・デイヴ・メイコン、カーター・ファミリーなどは複数の曲が収録されている。
2000年。カーター・ファミリーが4曲、ジミー・ロジャースが3曲のほか、ケイジャンのブロー・フレアーズとそのメンバーのソロが3曲入る。
2000年。27曲のうちビル・モンローが5曲、デルモア・ブラザーズが4曲、マール・トラヴィスが4曲、ブルー・スカイ・ボーイズが3曲、ロイ・エイカフが3曲。
2000年。28曲収録。ウディ・ガスリーとピート・シーガーに焦点を絞った選曲。全曲が40年代の録音。