ギースはアメリカのロックバンド。ニューヨーク・ブルックリン出身。4人編成。ボーカルのキャメロン・ウィンターを中心とする。「3D・カントリー」で注目され「ゲッティング・キルド」で絶賛された。
2018年。
2021年。ザ・ストロークス、アークティック・モンキーズ、ザ・キラーズ、ザ・ナショナルなどを通過してきたバンドが、濁りの少ない高い音階のギターを中心としながら曲の途中に変化を交えていく。控えめにシンセサイザーを使うが、「エクスプローディング・ハウス」「オポチュニティ・イズ・ノッキング」では前面に出てくる。「ファースト・ワールド・ウォリアー」は3分ながらバンドの別の側面を見せ、緊張感がある。7分近くある「ディスコ」はディスコ調ではなく、ギターとシンセサイザーの不協和音が不定型のオルタナティブロックを思わせる。
2023年。ボーカルの表現力が上がり、それに伴って曲の幅も広がった。前作にあったロックンロールの雰囲気はやや薄れ、70年代ソウル、ポップス、ロック、ポストパンクをイメージしたような曲が並ぶ。予測不可能な展開も多く、衝動性を曲の途中や終わりに差し込むことも複数ある。2000年代以前のジャンルの定型化されたイメージを意図的に利用し、かつその定型を並列に並べてアルバム全体のイメージを不定型にしようとしているようだ。オープニング曲の「2122」はラッシュの「2112」を思わせるが曲は関連がなく、豪快なロックだ。タイトル曲や「アイ・シー・マイセルフ」はソウル風の女性コーラスが入る。
2025年。ギターが1人減り4人編成。ボーカルがさらに高い表現力を駆使して、曲がボーカルに依存するようになった。オープニング曲の「トリニダッド」は、このアルバムを聴くにあたっての全体的な把握を拒否するかのような即興性の高い曲だ。「コブラ」以降はアメリカのルーツ音楽やロックンロールを交えながら、自由にジャンルを接続してバンドサウンドを維持する。今や曲の再構成は指先で簡単にできるが、ギースはバンド演奏をできるだけ維持する。歌詞から批判精神を読み取ることも可能ではあるものの、曖昧、多義的にしておくことにも意識的だと思われる。バンドでありながらロックの定型を離れようとするバンドが、歌詞においてアメリカの社会がどうだといった定型化された社会批判をそのまま追従はしないだろう。「トリニダッド」「100・ホーセズ」「オ・ペイ・ディ・コケン」「ロング・アイランド・シティ・ヒア・アイ・カム」のような曲が、アメリカの中流の若い世代のポピュラー音楽観と思考を感覚的に共有している。