クレイロはアメリカのシンガー・ソングライター。1998年生まれ。
2019年。元ヴァンパイア・ウィークエンドのロスタム・バトマングリが全面的に協力している。クレイロがボーカル、ギター、ロスタム・バトマングリがシンセサイザー、ギター、ベース、プログラミングを担っていることが多い。11曲のうちバンド演奏に近いのは3曲。クレイロはキーボードよりもギターを弾く曲が多く、多少のキーボードとプログラミングで1人で完成させているイメージを保っている。バンド演奏かプログラミングかという区分は作り手も聞き手もほとんど意識しない時代になっているが、プログラミングを多用していてもバンドらしい雰囲気を維持している。ボーカルは告白型の抑制的な歌い方だ。多くの若いシンガー・ソングライターと同様に、人間関係と追憶、回想を歌う。最後の曲だけ7分近くあり、児童合唱が入っている。
2021年。テイラー・スウィフトのアルバムのプロデューサーとして有名なジャック・アントノフが全面的に協力。プログラミングはほとんどなくなり、シンセサイザーも12曲のうち4曲しか使われていない。伝統的な楽器を人が演奏することにこだわっている。中心楽器はアコースティックギターとピアノと弦楽器。アップテンポの「ジニアス」でも、ボーカルは前作より控えめ。全般的に、ささやくようなボーカルを重ねている。ほぼアコースティックギターと弦楽器だけの「ブラウス」は終始2声、3声のコーラスを重ねている。この曲と「リーパー」でロードが参加している。追憶や感傷にとどまらず、女性としての将来の不安、社会志向とは異なる普通の女性の内省を歌う。
2024年。アルバムごとにプロデューサーが変わり、このアルバムはノラ・ジョーンズのプロデューサーが務めている。多くのシンガー・ソングライターとは逆に、アルバムを出す度に演奏がバンドに近づき、電子機器はなくなっていく。オープニング曲の「ノマド」はスライドギターとアップライトベースを使う。ボーカルの歌い方は抑制的なままだが、ドラムは強調されている。シンガー・ソングライターなので、音響的な変化はそれほど重要ではなく、何を歌っているかが問題だ。ビヨンセやテイラー・スウィフトのように社会の先導者として変革を訴える歌手とパーティー文化や異性愛文化を歌う歌手の間の主張しない思索は、主張する歌手とは異なる実感を生む。このアルバムで日本デビュー。