チャーリーXCX(チャーリー・エックスシーエックス)はイギリス、ロンドン出身の歌手。1992年生まれ。XCXはPCのメッセンジャーのアカウント名をそのまま使用。2000、2010年代のエレクトロ音楽に影響を受ける。2010年代のアルバムは実験性があるハイパーポップ、20年代に入って「クラッシュ」がヒット。「ブラット」は世界的ヒットとなった。
2013年。1980~2000年代のシンセサイザーを多用したポップスを、2010年代のプログラミングで実現しているようなアルバム。曲の中には、80年代の明るくないメロディー、深めのエコーがあり、シンセサイザーやエレクトロ音楽の断片を加工したような、ヴェイパーウェーブの影響もある。オープニング曲の「ニュークリア・シーズンズ」は文字通りの核の季節と同時に、別れることから逃げなければならないという状況を、放射性物質から逃げることに例えている。「ユー(ハ、ハ、ハ)」「ユーアー・ザ・ワン」「アイ・ラヴ・イット」収録。
2014年。ジャケットのイメージどおりの「SUCKER」で始まり、若い女性のはつらつとした、開き直った態度を歌う。2000年代前半のアヴリル・ラヴィーンが持っていた爽快さとファッション性を10年後にロンドン出身のチャーリーXCXが再現しているかのようだ。タイトルを繰り返し、一緒に歌いやすい曲が多い。全曲が2、3分台で、バラードはない。「ブーム・クラップ」「ブレイク・ザ・ルールズ」収録。日本盤はこの2曲の日本語バージョンも入っている。
2019年。多数のゲストを迎えた。15曲の内9曲はゲストと協演している。オープニング曲はタイトルで「ネクスト・レベル・チャーリー」と宣言している。ゲストの多さによって曲がどうなっても許容されるという先入観ができ、「クリック」「シェイク・イット」は実験性に富む。「ホワイト・メルセデス」はレディー・ガガのようなメロディー。ゲストが目立つのは「ブレイム・イット・オン・ユア・ラヴ」のリゾ、「クリック」のキム・ペトラス、トミー・キャッシュ、「フェブラリー2017」のクレイロ、ヤエジ。「1999」と「2099」はともにトロイ・シヴァンが参加しており、「2099」は「1999」の続編となっている。
2020年。コロナ禍で制作。ほぼすべての音をシンセサイザー、ドラムマシン、エレクトロニクス機材のプログラミングで制作している。チャーリーXCXはもともと他の女性アーティストよりも実験的なエレクトロ音が多かったが、このアルバムではほぼ電子機器しか使えないという制限があっても、荒削りなハイパーポップ風の音を維持している。コロナ禍で制作したということを、癒やしの方向に持っていかないのがチャーリーXCXの考え方だろう。
2022年。とがったエレクトロ音や鋭く引っ掻くシンセサイザー音が減り、80年代後半から90年代のシンセポップに近い曲が増えた。70、80年代生まれの中年世代に受け入れられやすい音になっている。これ以前の4枚のアルバムが刺激的で実験性の高いハイパーポップだったため、1世代前のポップな曲調に変化したとしても、ポップの中に出てくる刺激がハイパーポップと解釈され、好意的に聞ける。曲の幅をポップ方面にうまく広げた。「ニュー・シェイプス」はクリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズとキャロライン・ポラチェックと協演。「ベッグ・フォー・ユー」はリナ・サワヤマと協演。
2024年。前作のポップさを維持しながら、音響としては電子音の編集と加工を多めにとり、それがハイパーポップへの回帰と捉えられる。冒険を試みた前作、その冒険が成功したアルバムの次作として、予想の範囲内ながらもうまく着地している。ゲストを招かず、チャーリーXCXが1人で歌っていることも好感が持てる。このアルバムの特異性の1つに、英米での社会現象化がある。米大統領選で民主党の女性候補者がこのアルバムのイメージを好意的に使った。イメージとはアルバムタイトルとアルバムジャケットと音楽性とチャーリーXCXの個性の総体だ。このアルバムから読み取れるメッセージ性は、それが意図されたものかどうかに関わらず、新世代の女性の積極性と自己肯定志向であり、ジャケットに自己を過剰に露出させない性の無効化であり、電子機器の多用によるフューチャリズムだ。これらはすべてをチャーリーXCXがコントロールしているわけではなく、コロナ禍前の2000年代、2010年代から積み重ねられた社会改善の努力と浸透が背景にある。チャーリーXCXの影響力をビヨンセやテイラー・スウィフト近くまで引き上げた。
2024年。「ブラット」に3曲追加したデラックス版。3曲はクラブ色が大きい。
2026年。邦題「嵐が丘」。映画のサウンドトラック盤。シンセサイザー、ドラムマシンなどの電子機器による演奏を中心に、弦楽合奏団が加わる。雰囲気は以前のアルバムと異なる。「ハウス」はベルベット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルが参加し、ホラーやサイコスリラー映画のような怖い曲になっている。3曲目の「ダイイング・フォー・ユー」からエレクトロニックな曲になる。アルバム全体としてはサウンドトラックとしての雰囲気優先の曲調。